孤独がふたりを食い殺すまで

作品集: 最新 投稿日時: 2010/03/20 22:47:42 更新日時: 2010/03/20 22:47:42 評価: 13/13 POINT: 103 SPPOINT: 73 Rate: 1.83






 棘が刺さっているみたいに、心の奥がずっとちくちく痛む。
 私たちが偽物の姉妹じゃなかったら、あるいは本当の姉妹だったなら、こんな思いしなくて済んだのかな。
 ねぇ、――さとり。








孤独がふたりを食い殺すまで









一、




 黒、黒、黒。
 その斑点は橋にまで続いていた。


「はぁ。浮世のすべてが妬ましい」
 私の一日は、そこから始まる。


 地上と地底を繋ぐ橋。とはいえ、そんなに大きな橋でもなければ長い橋でもない。私が立っているのは随分と地底寄りだが、そこからでも地上へ続く橋の先は見えた。
 だから、それも見えたのだ。ぐったりと地に臥せる、黒い人型のシルエットが。
 死体だろうか、とその影に向かって歩みを進めた。腐っていたら処理が面倒だ。地霊殿の火焔猫でも呼んで運んでもらうしかない。新鮮だったら、かつ保存状態が良く見栄えが良ければ、それは頂こう。洗って捌けば食べられる部分もあるだろう。近付くにつれ、倒れているのは小柄な子供だと判った。子供なんて一体何十年ぶりだろう。私の妖怪たる部分がゆっくりと頭をもたげ、食欲がそそられた。足取りが軽くなる。
 けれど、私の期待は最悪な形で裏切られた。


「あんた、地霊殿の」
 全体的に黒っぽくなってしまっていたので気付かなかったが、黄と緑を基調にしたその服と、青く伸びるその第三の眼を見れば誰でも判る。地底の頭、地霊殿が主古明地さとりの妹ではないか。
 異臭がつんと鼻についた。既に黒く変色している血液の匂い。帽子はどこかに忘れてきたのか、外気に晒された髪から靴の先まで、すっかり匂いに染まってる。
「こんな所で寝るんじゃないわよ」
 靴の先で背中を軽く押した。
「いッだ、い」
「はぁ?」
 くぐもった弱々しい声に違和感を覚え、その場にしゃがみこんでよく見れば、返り血とばかり思っていた血液は、ほとんど彼女自身の出血だと気が付いた。上体を抱きかかえると、腹部に大きな裂傷を負っていて、内臓がごぼりと顔を覗かせているのに気が付いた。
 非常に面倒だが、ここで野たれ死まれても橋の景観が悪くなるし、私も気分良くない。地霊殿まで少し距離があるし、この怪我で自力で帰れというのも酷だろう。盛大なため息が自然と漏れた。無意識というやつだ、きっとこいつの所為。
「あんたにしては珍しいことね。しょうがないから送ってあげるわ」
 よいしょ、と抱きかかえて立ち上がる。全身血まみれなもんだから、ぬるりと気持ち悪い感触がした。服に血糊が貼りつく。最悪だ、洗って落ちるのだろうか、これ。


 さっさと行ってさとりに文句ひとつでも言って夕食でもたかろうか、などと考えていると、服の袖を引っ張られる感触がした。
「なに」
「帰、りたく、ない」
 息絶え絶えに、蚊の鳴くような声でこいしは言う。
「帰りたくないって何よ。ここにいられても鬱陶しいんだから、川に突き落とすわよ」
「やぁ、ッ」
 餓鬼か、こいつ。首を振って駄々をこねればなんでも通るとでも思っているのか。橋姫はそこまで優しくない。大人しくしていれば地霊殿まで送ってやったものを。何、ここの川は地霊殿の方へ流れるから、そのうち着くだろう。悪く思うな。駄々をこねた罰だ。
 持ち上げ、川に突き落とす体勢になった。
「そぉれ、なむさぁーん」
「痛っ、……ぱる、しっ」
 袖が完璧にホールドされている。離せよ。なんだその眼は。目尻に涙ためて潤ませた眼で見たって私は折れないわよ。可愛い掌で袖を掴みやがって、離せよ。そもそも逐一可愛いのよあんたは、なんなのよ。妬ましいわ。どうせ甘やかされて育ったんでしょう。そういう子供が一番嫌いなのよ。何よ。可愛い顔でお願いしやがって。なんでも言うこと聞いてくれると思ってるんでしょう。


「あぁもう……」
 聞いてあげるわよ、畜生。
 子供なんか嫌いだ。妬ましいもん。




*          *          *





「私は、何を、しているのかしら……本当に……」
 結局。私はこいしを家まで連れ帰って、ついさっき怪我の手当てを済ませたところだった。私はいつからこんなお人好しになってしまったのだろう。
「パルスィ、おなかすいた」
「作るわよ、作れば良いんでしょう畜生!」
 なんだあの傍若無人っぷりは。後でさとりに言いつけて、きっちり代償させてやろう。


 とりあえずおかゆで良いだろうか。怪我で大分弱っていることだし、あまり無理をさせない方が良い。確か黄桃が残っていたから、それも食べさせて……。
「ってなんで私はこんな甲斐甲斐しく世話してるのよ!」
「わぁい、桃大好きー」
「馴染み過ぎでしょうが!」
「まぁまぁ、これも何かの縁だと思って」
「張り倒すわよ?!」
 こいしはくすくす笑って、ソファに寝そべっている。服は襤褸のようだったし血に汚れていたから捨てた。今は私のパジャマを着ている。なんだこれ、至れり尽くせりじゃないか。


 諦めて、後でさとりからたっぷり謝礼をもらうことにした。そういえば、地霊殿に帰りたくないと言っていたことを思い出す。土鍋ごと持って、ソファ前のテーブルに置いた。しょうがないから黄桃も剥いてあげた。
「味は保証しないわ」
「いただきまーす」
 こいしは包帯と絆創膏だらけの両手を不格好に合わせてから、左手で蓮華を取った。利き手は右なのだろうが、今は使える状態にない。
 ちんたら。利き手でなく、怪我もしている手だ。当然時間もかかるし、こぼしもする。見ていて苛々した。
「あぁもう、鬱陶しい! 貸しなさいよ。食べさせてあげるから」
 蓮華を奪うと、こいしは一瞬驚いたような顔をして、それからすぐに笑顔を作った。「ありがと」、頬のガーゼが笑顔によじれた。


 彼女の姉であるところの古明地さとりとは、以前からそれなりの交流があったし、それなりの親交があった。少なくとも、この妹の迷惑を後で怒鳴りこみに行こうと思うくらいには(地霊殿にわざわざ出向くなんて、用があっても稀有なのが地底の一般なのだ)。私の中では、勇儀の次くらいに位置する知り合いである。
 けれど、古明地こいしとの交流はほとんどなかった。そもそも、無意識に任せてふらふらと出歩き、地上にいるとも地底にいるとも知れない彼女だ。まともに話したことのある奴の方が少ないのではないだろうか。私とて、こうして長らく同じ場所にいた試しなど一度もなかった。こいしはまるでそんなこと気にしていない様子で、随分と馴れ馴れしいけれど。姉とは大違いだ。


「聞きたいことがいくつかあるわ」
「あるだろうねぇ」
「一つ目、地霊殿に帰りたくない理由」
「お姉ちゃんと喧嘩したから」
「喧嘩? 信じらんない」
 さとりが喧嘩をすることなんてあったのか、と驚いた。私の知ってる限りでは、彼女は表情や感情の起伏が本当に乏しい。鬼が主催した宴会でちらと見かけたときも、楽しんでいるともいないとも取れない無表情を貼り付けて、輪から外れ、ひとり杯を傾けている姿しか見たことがなかった。
 大方こいしの言う喧嘩とは口論なのだろうが、そんなことをする性格にも思えない。彼女が声を荒げて物を言う姿など想像できなかった。
「もう少し帰ってこいって。そうでないなら、もっとこまめに連絡寄越せって。まぁ、いつも言われてる小言なんだけど」
 可愛らしいことだ。妹の身を案じて口論に至るとは。妬ましいったらありゃしないので、その話題は切り上げて次の質問に入る。
「二つ目。その怪我」
 こいしはそこで、ちょっと眼を伏せて視線をそらした。待てども何も言う気配がない。ここで黙秘権と来た。
「言わないと放り出すわよ」
 こいしは口をとがらせるだけで、何も言おうとしない。放り出してやろうか、とも思ったが、自分でご飯も碌に食べられない体たらくでひとり放り出したらどうなるだろう、と思ってしまう。なんだかそれは可哀相だ。


「まぁ、いいわ。あんたにそこまで興味ないし。早く食べなさい」
 なんだろ、もしかしたら私、とんでもないお人好しで子供好きなのかもしれない。


 その後、こいしはおかゆを完食し、黄桃も丸々一個たいらげた後、ソファでぐっすりお昼寝に入った。
 こいつ張り倒したい。
 風邪を引かぬよう、と押入れから分厚い毛布を出して掛けてやった私も張り倒したい。








二、




 いつか昔、勇儀に聞いたことがある。古明地姉妹は最後の覚り妖怪なのだと。地上の血は絶え、地底の血は残すところ彼女らふたり。そうしてもう、彼女らを最後にして、覚り妖怪は絶滅する運命にあるらしかった。
 呪われた血族なのだと、勇儀は言った。覚りは劣性遺伝らしかった。その上、子を宿しにくいらしい。覚り同士でも中々妊娠することができない。極めつけに、他の妖怪と比べて平均寿命が短かった。どうしたって繁栄できない種族なのだ。鬼のように強大な力がある訳でもない。あるのは、孤独な読心術だけ。けれどその能力の為に忌み嫌われる。せめて同族間だけでもと身を寄せ合うのに、子を宿すこともままならない。絶滅する為に生まれてきたかのような種族だった。聞いているだけでも哀れで、ちっとも妬ましくなかった。
 「覚り妖怪は孤独なんだ」、勇儀は言う。勇儀は誰とでも分け隔てなく仲良くした。顔の広さでは地底一だった。だから私とも、さとりとも深い交流があった。私よりずっと、さとりと話したのだろう。彼女の孤独も、地霊殿の住人と同じくらい、知っているのだろう。


「妹が、あの眼を閉じたろう」
「そうね」
「だから、本当の本当に覚り妖怪なのは、古明地さとり、あいつだけだ。もう誰もあいつの心を読んでやれないんだ。口にも顔にも出さないけど、あいつ、本当は妹に眼を開いて欲しいのさ。心を読まれたがっている。だって、あいつらの悲しみが判るのは覚り妖怪だけだもの。孤独から掬われたがってるのさ」
「それは、……全然。妬ましくないわね」
「なんでこいしは閉じちゃったんだろうなぁ。さとりのことを一番判ってやれるのはこいしだし、こいしのことを一番判ってやれるのはさとりだろうに」


 私はそのとき「さぁね」と返したけれど、実のところ、こいしの気持ちが判らないでもないのだった。嫌われたくない、嫌われるのが怖い。それは、他者との関係を一切持たない独りぼっちであれば感じる筈がない。失いたくない誰かができたとき、その感情は芽生える。私は昔、独りだった。そのときは感情が麻痺してしまって、何も思わない。無いものは失うことができないように。
 私はなんとなく、妄想をしたのだ。その失いたくない誰かとは、姉のことではないのかと。姉に嫌われるのが怖くて瞳を閉じた妹。その裏側に触れたいと思った。なんだか妬ましかった。なんにも妬ましくない覚り妖怪だけど、愛すべき家族がいるというその一点において、そうしてそこに何か裏があるという疑惑が、なんだか、ぼんやりと、妬ましかった。




*          *          *





 あれから三日が経った。
「なんであんたはまだうちに居座ってるのよ」
「居心地が良くてぇ」
「もう自力で歩けるでしょう。帰れ」
「つれないこと言わずに」
 こいしは食後の痛み止めの薬を飲んで、またソファに寝転んだ。私のソファはいつまでも占領されたままだ。あそこで昼寝をするのが日課なのに。なんで私はこいつにこれ程までに尽くしてやってるんだろう。痛み止めの薬だって、夜寝付けないと言うからわざわざ買ってきてやったのだ。
 橋に行く気分でなかったから、カーペットにごろんと横になった。本当ならソファでお昼寝している時分なのに。
「うん、でも、感謝してるんだよ。思ったより優しいんだね。ありがと」
「一言余計よ」
 ふふ、とこいしは笑った。そうやって薄く笑う様は本当にさとりとよく似ていた。髪や瞳の色も、背丈も声も顔つきも、奇妙なことに全然似ていない姉妹だけど。


「よくしてくれてるから、答えることにするよ。この怪我ね、地上の巫女にやられたの。やられたっていうか、まぁあっちが正しいんだけど」
 私は軽く相槌だけして続きを待った。こいしは地底でも一二を争う実力を持っていたから、彼女をここまでこてんぱんにした相手は気になっていたけれど、なるほどあの巫女と言われれば納得できる。
「理由もなく無暗に殺されちゃ困る、ってね。人間を殺しちゃったのよ。運悪く、巫女に見つかっちゃった」
「本当に理由はなかったの?」
「気が付いたら死んでた。それだけだよ。いつもそんな感じなの、私って。だから巫女が怒るのも道理だね。みんな死んでるのよ、気が付けばさ。昔っから、そう」
「昔から?」
「みんな死んだよ。気が付いたらお姉ちゃんと世界にふたりきり。その上、覚り妖怪は私たちで最後だって。お姉ちゃんと私はまるで鏡合わせだったわ」
「だからあんたはその眼を閉じたの?」
「そうだよ。お姉ちゃんが大事だったからね。傷付けたくなかった」
「どういうこと?」
「さぁ、どういうことなんだろうね」
 うすらとぼけて、そのままこいしは両のまぶたを閉じた。しばらくすると、静かな寝息が聞こえてきた。さっきの市販薬の副作用の眠気かもしれない。


 大事だから傷付けたくなかったとこいしは言った。心が読めてしまえば、さとりが傷付くようなことがあったのだろうか。いつかに私がした妄想と合致する。こいしは確かに、さとりに何か隠しごとをしているのだ。
 少しだけ興味が湧いた。この姉妹は、やはりどこか、妬ましい。








三、




「感情には、音があります」
 さとりは、私の方を見もしないでそう呟く。
「とはいえ、その意味を理解できるのは、残念ながら、今や私以外にいないのですが」


 私が地霊殿に赴き、さとりの前に立った時点で、さとりはもう私の用件を全て手に入れてしまったのだろう。その上で、さとりはそんな風に言葉を紡ぐ。
「そう、あの子が。迷惑をかけましたね」
「本当に」
「お礼は、また後で考えましょう。どうやら貴方の案件はそこでないようだから」
 さとりは豪奢なソファに腰掛けたまま、私にも座るよう促した。向かいの席に座って、先程ペットが運んできた紅茶に口をつけた。
「あんたはなんで妹を野放しにしているの」
 どうせ読まれているだろうが、はっきりと言葉にした。「まるで危険な猛獣のような言い草ですね」、さとりは苦笑して言った。
「こいしは言ったわ。気付いたら死んでた、いつもそうだ、って。それが能力なのかもしれないけど、無意識にほいほい殺すような子、好きにさせておくべきではないと思うわ」
 さとりは黙っていた。心に浮かぶ色々なことを整理して、慎重に言葉を選んでいるような顔だった。
「その通りです」
 重い、一言だった。


「私は結局、あの子が怖いのですね。接し方が判らない。姉だというのに、情けない話です」
「それは、心が読めないから?」
「それもあります。けれど、あの子が第三の眼を閉じて正解だったのかもしれない。詰まる所、私たちは判り合えないのだろうし」
「どういう意味」
 さとりはそこで私を見て、小首をかしげて笑った。自嘲するような、陰のある笑みだった。
「昔話を聞いてくれますか。遠い、はるか昔の話です」
 私はそこで黙った。返事をする必要もないと思ったからだ。


「私は、最後の覚り妖怪としてこの世に生を受けました」
 声は、真っ直ぐ響いている。その独特な語り口が、耳に変に残って反響する。
「当時、覚りの個体数は減少の一途を辿っていました。両親は、きっとそうなるだろうと悟ったようなのです。だから私にそのままさとりと名付けた。覚りとしての尊厳と矜持を篭めて」
 相槌を打つことさえ忘れて聞き入っていた。さとりは気にせず続ける。
「そうして私がいくらか育った頃、私たちはある幼子と出会ったのです。後に次女として古明地家に迎え入れられることになる、古明地こいし。彼女は世界に独りぼっちで、名前さえ持たず、独りで生きていたのです」
「それって、つまり。あんたとあの子が、血が繋がってないってこと?」
「はい。同じ種族というだけの、まったくの他人です」
 さとりは時々、伏し目がちに視線を泳がせた。胸の瞳は変わらず私を見つめていたけれど。


「彼女は可哀相に、眼前で親を妖怪に殺されたようでした。心をすっかり閉じて、私よりずっと幼い子供なのに、誰も信じようとしなかった。誰も信じることができなかった。あらゆるものから自分を守る為に、第三の眼はいつでも爛々と輝いて周囲を睨みつけるばかりでした。両親は彼女をすぐに養子にしました。誰も信じることのできない彼女の反発は、それはもう酷いものでしたけれど、長い時間をかけて解きほぐしていったのです。私も姉として、得意になって可愛がったつもりです。思えば、あのときが一番幸せだったのかもしれない」
 くるくると、さとりは自分の癖毛を弄んだ。時折黙りこんで、何事かを思案しながら話しているような塩梅だった。私はその度、一言も発さずに待っていた。


「感情には音がある、と先程言ったでしょう。喜びはね、柔らかい音がするんです。嬉しさは暖かい音。ちょっと違うんですよ。確かに、音がするんです。覚りには判るのです。あの頃のこいしの心は、いつだってそんな音がしていたのですから」
 柔らかい音も、暖かい音も、私には判りっこない。私は橋姫であって覚りではないからだ。それは、もう、誰にも判らない。心を読む覚りは、眼の前のさとりを除いて誰もいない。さとりは孤独だった。彼女にしか判らない、騒がしい世界で生きている。


「そのうち、両親が亡くなりました。理由や原因はここでは必要じゃありませんから、省略しますけれど。私は深く悲しみましたが、それでも責任は強く感じていました。今度は私が両親に代わってこの子を守ってあげなければと思ったのです。私は、私の出来る限りであの子に良くしたつもりでいます」
 そこでまた、一呼吸の沈黙。さとりが黙れば、部屋は静まり返っていた。けれどさとりが覚りである以上、それでも音は聞こえるのだろう。私とさとりの感情が音になって、小さく部屋を彩っているのだろう。そしてそれは、永遠に、さとりにしか理解できないのだ。


「汚いことも、悪いことも。非道なことも、不当なことも。出来ることはなんだってしました。両親が亡くなったのは本当に耐えがたいショックでしたけど、こいしがいたという一点において私は幸せであれたのです。私が何よりも恐怖したのは、覚りが私だけになることでした。あまりにも一方的なコミュニケーションを、そんな耐えがたい孤独を、私は拒絶していました。だから、こいしが覚りである以上、それより望むことなどなんにもありませんでした」
 覚りが、さとりだけになること。
 それは、現在のことを示しているのではないのか?


「けれど、だんだん。こいしの心には、不協和音が鳴り響き始めたのです。それは、貴方が思うような、嫌われたくないという周囲に向けられたものではありません。……元が他人という理由も大きかったのでしょう。あの子は、私に、姉妹以上の感情を持ち始めたのです。私は気付きながら、素知らぬふりをしました。けれどあの子の感情は日を追う毎に大きくなって、不協和音は日毎に凄まじい音量で私の胸を打ったのです」
「それで、あんたはどうしたの?」
 それはもう、ほとんど答えの判り切った問いだった。さとりがそこでこいしを受け入れたなら、この話はそこで終わるだろうに。
「拒否しました」
 そうだ、すべてはそこから始まっている。さとりがこいしを拒絶したから、こいしは第三の眼を閉じた。
「私には、あの子は庇護すべき妹でしかなかった」


 ――お姉ちゃんが大事だったからね。傷付けたくなかった。


 そう言って、こいしは笑ったではないか。


 どうしてちょっと喧嘩したくらいで帰りにくくなってしまうのか、不思議に思っていた。この姉妹は、脆すぎるのだ。感情に嘘をついて、心さえ覆い隠して、なんでもないような顔して表面的な笑顔ばかり貼り付けて、見え透いた嘘をお互い信じて隠して生きなければ、上手くやっていけない。だからそんな小さなことで揺らいでしまう。


「けれどあの子には私の隣にいて欲しい。それは、私をこの孤独から掬い上げて欲しいということです。音が聴こえるのです。孤独がどんな音を鳴らすと思いますか? 本当に、冷たい音をたてるのです。鐘の音のように、甲高く、細い音です。かぁん、かぁん、私自身の冷たい音が、いつだって耳にこびりついて剥がれない。私はもう、独りでこの音を聴き続けることに耐えられない。あの子だけが私を掬って救ってくれるのです」
 両耳を押さえ、さとりは祈るように言う。声は震えていた。私にその孤独は聴こえない。誰にも、聴こえない。
 なんて、哀れなんだろう。覚り妖怪の末路とは、そんなものなのだろうか。


 愛するが故に傷付いてゆく。判り合えないが故に愛してゆく。哀れで、惨めで、苦い。
 けれど、私には。嫉妬狂いの橋姫には。
 その身を焦がす程の愛が、妬ましかった。








四、




 こいしがうちに居座ってから五日目を迎えた。怪我は腹部の大きな裂傷を残す以外にはほぼ治って、あとは精々傷跡が消えるのを待つ程度だというのに、こいしは未だ地霊殿に帰ろうとしない。痛み止めの薬を飲んで、こいしはまだ私のソファを占領したままでいる。
「あんた、いつになったら帰るつもり」
「えー。ごめんね?」
「別に怒ってる訳じゃないわ。呆れてるけど。ただ、時間を置けば置く程、こじれた仲は修復しづらくなるわよ」
「傷が全部消えるまで待って」
「はぁ」
「お姉ちゃんに、心配かけたくないんだ」
「何それ。言ってることがめちゃくちゃよ。家に帰らない方が心配するでしょ、普通」
「お姉ちゃんは心配しない。私、ほとんど地霊殿に帰ってないし」
「あんたらの口論の理由はなんだったのよ。あんたが帰らないからでしょう」
「あれは心配じゃないよ。心配だとしても私の心配じゃない。私が外で馬鹿なことするのが嫌なだけなの」


 何か言うだけ無駄だと思い、ため息をついて返事をしなかった。こいしは気にも留めず続ける。
「お姉ちゃんは、優しいの。優しすぎる」
 そうだろうか。私にはとてもそうには思えない。確かにさとりはこいしを守り続けてきたかもしれない。けれどこいしの気持ちには手酷く拒絶した。だのに、自分が寂しいからと第三の眼を開かせようとしている。ひどく自分勝手で、独善的だ。
「お姉ちゃんが私を持て余してるのも知ってる」


「おかしいでしょう」
 声が、零れた。
「どうしてさとりを責めないのよ。あいつに拒絶されたんでしょう。別に私はあんたの味方もあいつの味方もしないけど、傍から見てれば奇妙よ、あんたたち。どうしてそんな風にお互いを理解できもしないのに愛していられるのよ。拒んで距離を置いて、嘘の笑顔だけ貼り付けて上っ面だけの言葉並べて、それでどうして」
 言うつもりではなかった。さとりにだって、何も言うなと口止めされた筈なのに。けれどすべてが遅い。感情は言葉にされてしまった。


 こいしは笑っていた。いつだって笑っているのだ。まるでそれしか知らないかのように。


「それは違うよ、パルスィ」
 笑顔で、ゆるやかに首を横に振る。
「私たちはお互いを誰より理解できるんだよ。確かに私はもう心を読むことはできないけど、それでも私たちは最後の覚り妖怪なんだもの」
 勇儀は言った、「本当は妹に眼を開いて欲しいのさ」、と。しかし本当にそうだろうか。さとりは一言もそんなことを言わなかった。「あの子には私の隣にいて欲しい」、としか言わなかった。心が読める読めないは度外視だった。ならば、さとりの本当の願いは? こいしの本当の願いは? この姉妹はどこに辿り着こうとしている?


「お姉ちゃんに聞いたんだね。うん、私はお姉ちゃんが大好きだよ。この世もあの世も全部ひっくるめて、お姉ちゃん以上に価値を持つ存在なんかない。だからこそ私たちは距離を置かなくちゃいけないし、私はお姉ちゃんに拒否される必要があったんだよ」
 何を言っているのか判らない。だからこそ、だって?
「お姉ちゃんは私を受け入れることだって出来たんだよ。でもそれをしなかった。あのときお姉ちゃんが私を受け入れて、一生ふたりで愛し合えたなら、それはきっとこの上もなく幸せだよ。でもそれじゃ駄目なんだ。私たちは最期まで孤独に、覚り妖怪として生きるんだよ。孤独こそ、私たちの尊厳と矜持なんだよ。孤独に愛されたまま、覚り妖怪の血は途絶える」


 こいしは笑っている。いつだって笑っているのだ。悲しみも苦しみも嘆きも痛みもすべてを胸に仕舞い込んで。


「あるところに、ふたりの覚り妖怪の姉妹がいました。けれど妹は、他人に嫌われるのが怖くて、覚りの眼を閉じてしまいました。姉は、心の弱い妹を憐れみながら、最後まで覚りの眼を閉じることなく、強い心を持ち続けました。姉は誰よりも嫌われましたが、それにも負けず、地霊殿という大きなお屋敷で、たくさんのペットに慕われ、是非曲直庁からの仕事をこなしました。そうです、覚り妖怪は、その能力の為に誰からも忌み嫌われましたが、それを活かして立派に生きたのです。……ちゃん、ちゃん」
「なによ、それ」
 声が震えているのが自分でも判った。その震えはどこから来たのだろうか。怒りとも悲しみとも憤りとも取れた。
「私たちの望む、最後の覚り妖怪。約束したんだ。覚りを、ただの嫌われ者で終わらせたりしないって」
「あんたは?」
「私は、お姉ちゃんを引き立てる為の脇役。お姉ちゃんがすべての覚りを背負うんだよ。お姉ちゃんが理想になるんだ」
 そこに希望はあるのだろうか。それで覚りは救われるのだろうか。少なくともこの姉妹はそう信じている。なんの確証もない未来に、自らのすべてを投げ打って。


 笑顔の横面を殴り飛ばしてやりたかった。何故笑うんだ。恋を隠して、自分を偽って、形もなく不確定で曖昧なものを手に入れようとしている。ただ、覚りとしての尊厳と矜持の為に。「さとり」と名付けられた、最後の覚り妖怪の為に。


「だから、心配かけたくないんだ。眼を閉じてこの能力が手に入るなんて想定外だし。上手く制御できてないなんて、言えないよ」
 こいしは笑っている。いつだって笑っているのだ。笑うことしか出来なくなった可哀相な覚りを演じている。


 それでこいしは幸せなのだろうか。さとりは幸せなのだろうか。連帯することも出来ず、惨めにお互いを孤独に追いやって、せめてもと手をかざし合う。
 嫌われる為に生まれてきた種族。孤独になる為に生まれてきた種族。絶滅する為に生まれてきた種族。そうして、嫌われ、孤独で、絶滅しようとしている姉妹がそこにある。それでも姉妹は、最期まで覚りでいようとしている。孤独の淵に立って尚、笑顔と無表情で心臓が止まる時を待っている。


 身を焦がす愛が妬ましい。
 けれどそれ以上に、ここにあるのにどうしたって喪われてしまう存在が、どうしようもなく悔しかった。








五、




 こいしがうちに来てから一週間が立った朝、やっとうちを出て行くことになった。服は捨ててしまったから、しょうがなく、私の普段着を貸してやった。私より少し背の低いこいしには、些かサイズが合っていないようだった。
「色々ありがとね。お礼はお姉ちゃんにでもたかっといて」
「元よりそのつもりだわ」
 ふふ、とこいしは薄く笑ってみせた。
「その顔。さとりに、そっくりよ」
 こいしはくりくりと大きな両眼を驚いたように見開いた。
「ほんとに?」
「えぇ。綺麗な瞳で、妬ましいわ。あんたたちは、似てるのよ」
「……ほんとにぃ」
 はにかむように、頬を染めて深く微笑んでいる。
 さとりに言わせれば、きっと何かしらの音がしているのだろう。柔らかく、暖かい音が。それがどんな音なのか、私には一生聴こえないのだろうけど。今になってみれば、少しだけ、判る気がした。


「またさとりとぎくしゃくしたら、うちに来れば」
「え、良いの?」
「良い気味だし」
「ちぇ。流石橋姫、性格が悪いわ」
「他人の不幸は蜜の味がするのよ」


 この一週間、こいしの笑顔以外の表情を見ることはなかった。もはや刷り込みの領域だ。
 あるいは、もしかしたらさとりと喧嘩しただなんて嘘ではないかと疑ってしまう。そんな風に、精神的に未熟な自分を演出しているのではないだろうか。それが真実だとする裏付けも証拠もない。しかし、それがでたらめだとする裏付けや証拠もまた、ない。


 ポケットをあさると、中から小さな箱が出てきた。こいしにずっと飲ませていた市販の痛み止め薬だ。あと数錠、残っている。
「あげる」
「えー。痛み止めでしょ、もう要らないよ」
「違うわ。――姉と仲直り出来る薬」
 そんな冗談に、こいしはまた微笑んだ。つくづく、笑顔の上手いお嬢さんだ。
「じゃあ、ありがたく」
 恭しく受け取って、その場でざらざらと口に入れていった。まさかそのまま飲むとは思わなかったので、度肝を抜かれた。ごくん、飲み干して、眩しいくらいの満面の笑みを浮かべた。
「うん、上手く仲直り出来そうな気がする。じゃっ、帰るね」


 そうして地霊殿の方向へと遠くなっていく後ろ姿を、見えなくなるまで視線で追った。二度と開かれることのない、青い覚りの眼が揺れていた。
 この一週間、知らなくて良いことを色々と知ってしまった気がするが、私自身に何か変化を及ぼす訳でもない。
 いつも通りの朝、いつも通りの時間、いつも通りの橋。今日も今日とて橋姫たる私は橋に仁王立つ。やることがある訳でもなく、目的も理由も義務もなく、私はぼんやりとそこに立つ。適当に立って、極稀にそこを通り過ぎようとする者には邪魔をする。それ以外、特筆するような作業などない。達成感も充足感もないけれど、やめる理由も見当たらなかったし、やめたところで他にしたいことがある訳でもない。気紛れはそんな風に、惰性を引き延ばして私の日々を覆っている。そうして、今日もそうなる。


 けれど私はもう二度と、橋の上に倒れる人影に手を出さないだろう。
 さて、今日も一日を始めよう。


「はぁ。浮世のほとんどすべてが妬ましい」




*          *          *





 数日後、勇儀が主催する宴会に、珍しく古明地姉妹が揃って来ているのを見かけた。最初の方は姉妹ふたりで飲み交わしていたのが、途中からこいしはふらふらと輪の中に紛れていき、最終的にはいつの間にか宴会から姿を消していた。さとりは相も変わらず、楽しんでいるともいないとも取れない無表情を貼り付けて、輪から外れ、ひとり杯を傾けていた。


「ありゃ、こいしはもういないのか」
 勇儀が赤ら顔で話しかけてきた。
「さっきまではいたけどね」
「まったく、あの気紛れ者は……。しょうがない、さとりに話しかけてこよう」
 勇儀は大股でさとりへと近付いていき、大声で話しかけていた。完全に出来上がっている。勇儀につられて、わらわらと鬼がさとりの周りへ集まっていった。こちらからでも、さとりが辟易しているのが見て取れた。


「良い気味ね。全然妬ましくないわ」


 かろん、手に持った杯が急に音をたてた。
 見れば、小さく白い粒がひとつ、さっきまでなかったのに酒に混じって沈んでいた。手に取って口に含んだ。苦い。
「錠剤だわ、これ」
 あぁ、と得心した。


 全部演技なんじゃないだろうか。疑惑はいよいよ真実味を帯びてきた。
「どうせ笑って見てるんでしょう。気味の悪い奴」


 かぁん、かぁん。
 鐘の音のように、甲高く、細い音が聴こえる気がする。
 孤独はしかし、柔らかくも暖かい音と共に、私の胸に静かに鳴り響いていた。












おわり
孤独が私たちを食い殺すまでは、覚りとして生きてみせよう。
過酸化水素ストリキニーネ
http://sutomagu.web.fc2.com/
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2010/03/20 22:47:42
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1. 通常ポイント9点 お題ポイント2 ■2010/03/21 05:26:45
可愛いパルスィの世話焼きから浮かび上がってくる姉妹の奇妙な紲、という奴なのだろうか。
何と言うか、良かった。コレ以外に思いつかない。
ありえない絆というものは、感動的で退廃的で扇情的だなぁ。
ただ、なんかあんまりお題が見られなかったのが残念。
2. 通常ポイント9点 お題ポイント6 じろー ■2010/03/21 18:14:04
さとりの音がわかる設定は、非常におもしろいと思いました。そこに共感覚でもって色までみれてしまったら、ほかにも違う感覚を持ってしまっていたらどうなるのだろうか、少し邪推をしていまいました。

ただ、お題の使い方に関しては少しストレートすぎるかなぁと思いました。
音という設定はとても興味深かったですし、印象に残りましたが…という感じでした。
なんでしょう。ストーリーがとても面白いので、三題噺であるということが意識されなかったっていう。
ちょっと自分もよくわからないですが、オチの部分で何かしら使って頂けたら、またさらに彩りが加わると感じました。
せっかくの題材ですし、少し惜しい気がします。

さて、本編についてです。
悲しいお話ですし、救われない話でした。自分はこういう話は苦手です。ですが、こういう切なさも含まれているのが物語というものですよね。
最後の最後、救われるのかと思いスクロールを続けてみても、ここからどんでん返しでハッピーエンドにはならないと感じつつ、やっぱり、含みのあるなんだかやりきれない想いを残したまま読了しました。
あとがきを読むとさらにその悲痛さに拍車がかかります。

自分はさとりが大好きで、普段のノリなら「さとりん、俺が抱きしめてやんよ!」とか口に出すのですが、不思議とそういう気持ちにはなりませんでした。さとりが背負う運命の大きさ、それに見合う覚悟。軽々しく、幸せにしてやろうという言葉は吐けないんだなぁと思います。
だからこそ、このような不幸な結末(自分はそう感じました。けっしてハッピーエンドではないですから)だったのは、そのような現実の非情さ過酷さをしっかりと作者様が認識しておられるからだと、思ったりもします。
そのやるせなさが、冒頭にあった「すべてが妬ましい」から「ほとんどすべてが妬ましい」に変えさせたのでしょうか?
パルスィの心境の変化、そして心の機微もこのSSでは、きちんと描かれていて、ただ単純に妬ましいという言葉を使っているわけではないと感じました。妬ましいから、そして悔しい。自分のことのように、こいしの立場を想像して置き換え、それでいて悔しいと、他人のために思うパルスィがいじらしいです。他人に向けるだけの妬ましいという感情が、相手を想うことによって自らに向かい、そして悔しいと、自発的に思うことができたパルスィが描かれていると思いました。そこに至るまでの積み重ねたパルスィの感情を一気に昇華させた感じです。感服しました。

ただ、やっぱり自分はハッピーエンドが好きです。こいしにも心から笑ってほしいし、さとりの孤独を癒してあげたい。勇儀の二人を思う気持ちが報われてほしい。そしてパルスィ自身もまた、自分が妬ましくて妬ましくて、笑みが自然にこぼれてしまうぐらい幸せを感じてほしい。
そういった意味で作者様に、この続きでハッピーエンドを描いてほしかったりと無茶ぶりをします。ここで満点という終わりにはしてほしくない、なので9点ということで。次回に、またはテーマの違った次回作に期待しております。
3. 通常ポイント9点 お題ポイント9 きすけ ■2010/03/23 00:21:39
他の方々ものは1スクロール分位で読むのを止めてしまっていましたが、(何様だ
とても読みやすく引き込まれてしまい、最後まで楽しく読ませていただきました。
よくわからない感じ。意図が読みきれない感じ。暖かいようなそうでないような。
なんとなく人間外なやりとりの雰囲気を感じました。

「音」の使い方がとても綺麗だと思いました。
「きみ」は本文中に無かったと思うのですが、みんながそれぞれに対して何かしら思っているところが
「きみ」っぽいのかなぁとか思ってしまいました。(的外れかもですけど
「くすり」に関しては終盤の演出が好きです。「姉と仲直り出来る薬」とか、それをお酒に沈めちゃうこととか。
「市販」っていうフレーズにはなんだか違和感を覚えてしまいましたが。

もう一度読みたいと思いました。
4. 通常ポイント7点 お題ポイント6 ワタシ ■2010/03/28 02:12:37
地底の妖怪が市販の薬、というフレーズが無性に引っかかったり。
内容はコメントにしづらいですが、惹かれるものがありました。
5. 通常ポイント6点 お題ポイント6 ぶるり ■2010/04/01 18:00:12
 中々面白い話でした。結構こういう雰囲気好きなのです。
 いや、しかしよくまとまっている。
 少々話が唐突で(三章が特に)、少々困った気もしたのですが、短編コンペだというのを思い出しました。

 お題について。
 薬の使い方、音の使い方、気味の使い方。
 全て秀逸なものだと思います。
 物語のギミックとして全てのお題を回しているのは、いやはや頭が下がります。 
6. 通常ポイント7点 お題ポイント5 八重結界 ■2010/04/02 15:53:23
パルスィは優しいなあ、と。
姉妹の関係も気になるものの、橋姫とこいしの二人組についても色々と思わされることはありました。妬ましい。
7. 通常ポイント8点 お題ポイント6 静かな部屋 ■2010/04/02 20:53:42
【内容のこと】
 きっと僕は、こういう話が好きなんだろう。「青の炎」とか、「G線上の魔王」とか。
なんというか、こう、「誇りに生きる」みたいな。「ハカイ」のレミリアの存在価値もそれでしたか、ずいぶん印象に残っています。
最後の覚り妖怪、古明地 さとりは、最期まで、覚り妖怪であったと。今を生きる誰の為でもなく、過去を生きた総ての覚りの為に……って何を言ってるんだ僕は?

 こいしだけでなく、パルスィの一人称での描写も素敵でした。つっけんどんな中にも優しさがあるというか、不器用な優しさを覆い隠してるというか、自分の優しさすら鬱陶しがってるというか、そんな感じが、独白から表れていて、良かったです。

【お題のこと】
 「きみ」は……? どこで使われていたのか、分かりませんでした
 「音」「くすり」は、効果的に使えていたと思います
8. 通常ポイント9点 お題ポイント6 飛び入り魚 ■2010/04/02 21:40:38
 シリアスのわりに、何故だか心地よく読むことができました。
 感情が音として聞こえるという解釈も面白い。
 そしてパルスィがいちいち可愛いから困る
9. 通常ポイント7点 お題ポイント5 時計屋 ■2010/04/02 22:39:18
さとりとこいしのシリアスって結構、悲恋?が多い気がしますね。
最初から暗い、陰惨なイメージが漂っているからでしょうか。
このお話も実に丁寧に、二人の距離を描いていたと思います。
……しかしそれにしても可愛いな、このパルスィ。
10. 通常ポイント7点 お題ポイント7 K.M ■2010/04/02 23:02:40
こいしの真意が読めない……しかしだからこそ惹かれました。
11. 通常ポイント9点 お題ポイント7 Ministery ■2010/04/02 23:03:37
愛と誇りは親戚縁者。
脆くも強い姉妹の関係が美しすぎる。
12. 通常ポイント9点 お題ポイント5 ねじ巻き式ウーパールーパー ■2010/04/02 23:33:58
内容について:
揺さぶられる物語です。
キャラクターの持つ、あるいは吐露する感情。重厚に描写されたそれが、キャラクターに表情を与え、風景に色を与え、そして、この物語に揺らぎない世界観を与えているのです。それも30kbに満たない分量で。ただただ感服です。
繊細にしてやや寒色な筆致も、この物語によく合致していたように思います。あとパルパル超かわいいです。

お題について:
【くすり】3点。ガジェットとして有効な使われ方をしていたと思います。
【音】2点。お題としては些か弱かった気も。
【きみ】ごめんなさいなのですが、よく分かりませんでした。
13. 通常ポイント7点 お題ポイント3 パレット ■2010/04/02 23:43:18
申し訳ありません、時間が差し迫ってますので感想は後ほど……。
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