青年の家跡地を市民の公園に

皆さまへ
4月21日〜23日、被災地のがれき調査に行って参りました。
防じん対策が不十分なこと、ボランティアに入られる方など防じんマスクの装着が必要です。
膨大ながれきのアスベスト建材の分別がなされておらず、リサイクルされる恐れがあることなど、懸念されることが確認できた調査でした。
また、大量のがれきの受入を他の都道府県に依頼をしたということも報道されており、アスベスト入りのがれきが全国に拡がることも心配です。
大気環境測定は専門家ではないので出来ませんが、仙台のグループが塩釜市で2本/リットルを検出しています。
石巻漁港などは、水産加工場や倉庫など鉄骨にすべてスレートという建物が多く、いたるところにアスベスト建材が、がれきの中に散乱している状況です。

採取したサンプルを実体顕微鏡でみると、津波に浸かったスレート片は海水のコーティングでアスベスト繊維束が固まった状況で、このままでは比較的飛散しにくいでしょう。でもがれきの撤去などで建材片が粉砕されたり、建物に使用されていたアスベストが粉じんとして飛ぶ可能性は十分にあり、大変心配です。
斎藤紀代美

  
東日本大震災被災地のがれきのアスベスト調査報告
調査者:斎藤宏、斎藤紀代美
2011年4月21日〜23日
場所 21日 宮城県仙台市 @仙台市役所(駐車場の天井)→A仙台市若林区荒浜(がれき調査
  22日 宮城県大崎市 B鳴子温泉(駐車場の再生砕石調査)
    宮城県気仙沼市 C気仙沼市役所(環境課係長と面会&要請)→D気仙沼市魚町・東
   浜街道周辺(がれき調査)
  23日 仙台市 E青葉区・仙台環境開発(株)管理型最終処分場
    石巻市 F魚町(漁港・がれき調査)→G明神町(がれき調査)→H湊中学校
   (避難場所)
採取した建材 :スレート(波板、平板、屋根葦)、サイディング、珪酸カルシュウム板など
問題点    ●アスベスト建材片はどこにでも散乱。がれき処理で分別なし。湾岸工業地帯の破壊された工場、
                 倉庫の外壁や屋根材などから大量のアスベスト廃材が発生。組織的処理が要求される。リサイ
                 クルされて再生砕石に混入する可能性大。
              ●アスベスト粉じんの対策が不十分。


4月21
@ 仙台市役所(仙台市青葉区)  
      駐車場については、事前にアスベストセンターの永倉事務局長から情報があり、 地震により天井の珪カル板(?)が多数落下しているのを確認。一部は写真1のように集められているが、 そのまま放置してある。プラスチック袋に梱包するとか、シートを被せるなどの飛散対策がされていない。 また壁の脇にもまだ落下物が片付けられておらず散在している状況で心配になる。一部を採取。





写真1=仙台市役所駐車場落下物
A 仙台市若林区荒浜地区  
      途中検問に遭うが、「アスベスト調査員(NGO)」の腕章を見せると即オーケー。137号線を荒浜地区に向かう。
    この地区は見渡す限り平たんな仙台平野が続き、黒い津波に呑み込まれ破壊された民家や車が押し流されて、あらゆるものががれきとなって散乱している(写真2)。壊滅的被害を受け荒涼とした惨状に言葉もない。地盤も下がったせいなのか水がはけていない(写真3)。近くには逃げる丘もなく安全だろうと思われる仙台東部有料道路までは直線距離で1キロメートル以上離れている。多くの人々が逃げ遅れて犠牲になった地域である。
    強い東南の風がひゅうひゅうと音をたて耳元をかすめて行く。死者が呼ぶ泣き声のようにも聞こえ重い気持ちになった。 N95の防塵マスク着用しているため、潮の香りは判らない。

写真2=若林区  がれきとなった民家の惨状
1) 撤去作業が始まっていた  
      すでに乾いた場所では重機によるがれきの撤去作業が始まっていた。その近くで車を停め調査を開始する。がれきを積載した廃棄物運搬の大型トラックがもうもうと土煙を舞い上げて私たちの横を何台も通り過ぎて行く。
    壊れた民家はスレート葺、サイディングなどを使用した 近代的家屋が多く、スレート片が周辺に散乱している。潰された家、 屋根を下にひっくり返った家屋の周辺、道路脇、集積したがれきの山からも容易にスレート片が採取できた。







写真3=若林区  悉く破壊されがれきとなり荒涼とした風景が広がる。遠くに見える松林の向こうが海


2) 廃棄物処理事業者は「分別なんてできねえ」  
      スレート片が混じるがれきの山を調査していたら、現場の責任者と思われる廃棄物処理業者が「何やってんだ」と話かけてきた。アスベストの調査と説明した。
「神戸の震災でアスベスト粉じんが問題になった。倒壊した建物からアスベスト粉じんが飛散するので国も震災時のマニュアルを作っている。 分別処理して欲しい」と求めると、
「まだこのがれきの下に死んだ人もいる状況だから分別なんてやってられねえ」と応じる。
彼は中間処理業者で自社の再生砕石は「完全に分別しているからアスベストは全く入っていない」と豪語する。
防じんマスクをした方がいいですよというと「スレートなんて非飛散性だからやらねえ」と言う。 破砕されたら飛散すると説明しても聞き入れない相手だった。
緊急時ではあるが、散水もせず、分別しないでがれきの撤去作業している実態がよくわかるやりとりだった。
    がれきの山の傍らに散乱したスレートを重機のキャタピラが踏み潰し、轍に細かく破砕されたスレート片が発見された(写真5)。
    実際に分別されているのは、プロパンガスボンベ、バッテリー、鉄製品、電化製品、車、床柱、位牌などで、 アスベスト建材は全く分別されていない。ここのがれきを積んだ廃棄物運搬トラックがひっきりなしに出て行くが、 行き先を聞き逃したのが悔やまれる。






写真4=がれきの山にもスレート片が多数
            (仙台市若林区)
写真5=重機のキャタピラやトラックのタイヤの轍に
            細かいスレート片(若林区)
  写真6=落下した樋に懸かっているスレート屋根
            (コロニアル)
写真7=落下して散乱しているスレート屋根葺
            (コロニアル)
  仙台市被害状況(2011.5.6現在)
         死者680名    行方不明者180名    避難者1,968名(若林区1,050名)
          住宅全壊  3,190棟  火災34件     
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4月22日 宮城県大崎市、気仙沼市 写真8=鳴子温泉駐車場の再生砕石に
            アスベスト建材片を発見

写真9=正面3階建が気仙沼市役所

写真10=気仙沼市役所の駐車場の吹きつけ

写真12=採取したスレート片
B 鳴子温泉
      宿泊したホテルの周囲の駐車場を調査。再生砕石  敷設の2ヵ所を見る。2ヵ所ともアスベスト建材片を採取(写真8)




C 気仙沼市役所
      気仙沼市役所・市民生活部環境課を訪問した。市役所は高台にあり、津波の被害は受けていない(写真9)。
菅野俊克係長と面談。がれきなどに含まれるアスベスト粉じん対策を要請した。環境省が3月19日、東日本大地震で被災した建物のがれきなどにアスベスト(石綿)が含まれている恐れがあるとした飛散防止対策徹底の通知は知っていた。
アスベストセンターなどが3月20日に出したアスベスト対策の緊急提言とフィットテスト研究会の復旧作業従事者の粉塵やアスベスト用マスクの解説パンフなども渡した。また、アスベスト建材分別の徹底、防じんマスク使用を要請した。
    防じんマスクの備蓄がないというのでN95のマスク1ケースを参考に贈呈した。
    奥の白い建物が市役所、右手手前のビルが市役所の駐車場、1階部分が水に浸かったようだ。 駐車場の吹きつけはアスベスト含有ではないと環境課は言うが、念のために採取した(写真10)。

D 気仙沼市魚町・東浜街道周辺
      市役所に車を停め、徒歩で坂を下り港まで行くことにした。
商店街が軒を並べ、すべての建物の中に津波が侵入し、ひどい状況だった。
コンクリートの建物は外形を残し、木造家屋は全壊状態だった。
一部撤去作業が始まっていたが、手付かずのところも多かった。
足元をよく見るとスレート片などが散乱し容易に発見できた。
(写真12)
 
写真11=津波で全壊状態の木造建築

  気仙沼港に近づくにつれ、木造家屋の全壊が目立つ(写真13)。 写真13=津波で全壊の木造家屋

写真14=津波で打ち上げられた漁船

写真16=津波でなぎ倒された電柱
    この地域は特に規制はなく、一般車も自由に出入りしていた。カメラを抱えて撮影している者や  港に船が横付けされ、支援物資を運んでいる人々の姿も見かけた。
    湾内は波静かで潮位は高かった。港では漁船が打ち上げられて無惨な姿で傾いていた(写真14)。

港に係留しているはしけの上に細かく砕かれ散乱しているブルーの彩色スレート片を発見する(写真15)。どこから来たのかも不明で打ち上げられていた欠けらを採取した。

   道路の電柱も津波でなぎ倒されている(写真16)。

   気仙沼市では3月12日、漁船の造船所の重油タンクが倒れ市街地が炎に包まれ燃え続けた。  その区域の調査もしたかったが時間の関係で足を延すことができず残念だった。
   気仙沼ではスレート片、および倒壊した家屋の中にあった珪カル板などを採取した。
  写真15=港のはしけの上、波で打ち上げられた
              スレート片が散在

気仙沼市被害状況(2011.5.5現在)
       死者913人      行方不明者  617人
       住宅被災棟数  10,672棟      被災世帯数  9,500世帯
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4月23日  仙台市 写真17=仙台市青葉区の管理型最終処分場

写真18=仙台環境開発(株)入口の表示板

写真20=採取したスレート、サイディングなど
E 青葉区・仙台環境開発(株)管理型最終処分場
      浦和青年の家跡地のアスベスト含有再生砕石の
撤去工事で搬出先の最終処分場を訪問した(写真
17、18)。
    仙台市青葉区にある仙台環境開発(株)で廃石
綿などを受け入れる管理型最終処分場である。小
高い丘の上にあり、外からは見えないようになっている。ゲートで見学したいとガードマンに告げると責任者がやってきた。浦和青年の家の件は知っているが「予約なしではお見せできない」と断られる。「地震や津波によるアスベストのがれきを受け入れているのか」と訊ねると「産業廃棄物だけを受け入れているので、災害によるアスベストは受け入れていない。また今のところそういう要請もない」と答えた。




4月23日石巻市
F 魚町(漁港)
  石巻漁港へ行く。あいにくの雨だがそのせいで粉じんは飛散していないと思われ、防じんマスクをせずにゴム長靴で歩いた。磯の香りが漂い、漁港のせいか魚も散乱している。がれきの撤去はまだまだ手つかずの状態だが車が通るところだけは除けてある。   岸壁のコンクリートは到るところでひびが入り  陥没していた。地盤も下がっているように思われ  水がたまっている。がれきの中からすぐにアスベスト建材を見つけることができた(写真20)。
  写真19=石巻市魚町  津波で流された車など


    石巻市の被害(2011.5.7現在)
         死者  2,933人    行方不明者2,770人
          住宅全壊  28,000棟



     漁港の周辺は水産加工場や倉庫などが目立つ。鉄骨にスレート波板の屋根、外壁も同様の波板が使われ、スレート建材の建物が多い(写真21、22)。そのスレートが無惨にも津波で破壊され、ぶら下がり(写真23)、下に落ちて散乱していた。一部を採取した。





写真21=屋根、外壁すべてスレートの建物

写真22=鉄骨の建物の中に流れ込んだがれき

写真23=鉄骨がひしゃげ、垂れ下がるスレート

G 明神町
     漁港に近い親戚の家の辺りを訪ねた(写真24)。津波に家屋が押し流されて土台と床板のみで跡形もない。家族全員無事だったが津波の威力に改めて驚く。ここでもスレート片を採取(写真25)。



H 湊中学校(避難場所・明神町)
     親戚が避難したという湊中学校を訪ねて、支援物 資を届けた。1、2階まで海水に浸かり、3,4階が避難場所になっていた。ボランティアの方もアスベスト粉じんに気をつけてくださいと防じんマスクN95を2ケース、軍手などを手渡した。
   1階の教室に入ってみたら、津波で天井が落ちていた。珪カル板を採取。
   港の近くには日本製紙の巨大な石巻工場がある。 津波に浸かった大きな紙ロールがゴロゴロして被害の深刻さを物語っていた(写真26)。  以上
  写真24=明神町・親戚の家周辺、土台と床板が残
              る
  写真25=上記場所で採取した波板 写真26=紙のロールが散乱する日本製紙工場
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