
| 2011年7月2〜3日第28回日本環境会議東京大会が東京経済大学国分寺キャンパスで開かれました。 3日、「首都圏におけるアスベスト問題」の分科会において、再生砕石のアスベスト調査について発表しました。 予稿集に掲載された原稿を紹介します。 |
| 斎藤紀代美 |
| 第II分科会 | ○斎藤紀代美・川島浩・斎藤宏(浦和青年の家跡地利用を考える会) |
| 1.はじめに |
| 私たちが2010年5月から始めた再生砕石のアスベスト調査は1年間で約260カ所 (埼玉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、愛知県、香川県、宮城県)に及び、 その99%でアスベストが確認された。再生砕石は国が推奨する建築廃材・コンクリートのリサイクルで、リサイクル率98%を誇る 「リサイクルの優等生」と呼ばれる。その結果大量の再生砕石が身近な生活空間に入り込み、アスベストが環境を汚染し続けている。 全国的と思われるアスベスト含有再生砕石の実態について報告し問題提起したい。 |
| 2.ことの発端 | ![]() 2009.7.31 写真 採取した3検体 |
| 発端は地元の住環境問題だった。埼玉県立浦和青年の家の廃館 に伴い、その跡地(さいたま市)を緑の防災公園にと陳情したが、 県は日本赤十字社へ廉価売却した1)。2007年2月、県は解体後の 更地約3,200uに再生砂利を敷設、2009年7月、日赤が建設前に 初めて調査を許し、日赤、住民双方立会いの下、私たちが依頼し た東京労働安全衛生センターの外山測定士がサンプル採取(写真)。 クリソタイル、クロシドライトを検出。発注者の県は、8月22日 から手作業の除去工事を行う。だが、これでは不十分だと住民の 抗議により、2010 年1月負圧テント使用で総額1億3,800万円 の大掛りな除去工事となった。 |
| 3.再生砕石調査の拡大 次々と発見 |
| 県は搬入元の東和産業(株)に立入調査し、問題なしとして原因究明にいたらなかった。 2010年5月、鴻沼川側道(市内)の再生砕石からスレート片を発見してから調査を開始した。 民間、公営の駐車場、公園、道路予定地、道路工事現場などの再生砕石からサンプル採取をした。 その一部を東京労働安全衛生センターに分析を依頼、全てからアスベストが検出された。 外山測定士から指導を受け、また、実体顕微鏡(Leica MZ6)を導入してからは調査の精度もあがった。 現在、260カ所以上でサンプルを採取し検査を行った。その結果を表1に示す。再生砕石があるところ、アスベストありで全国的な問題と言えよう。 |
大阪、兵庫、香川、宮城 * クリソタイル(259)、クロシドライト(22) アモサイト(1) |
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| 4.行政の対応 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| 1) 「目視でない」と否定するさいたま市 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| 道路や公園など公共的場所の調査結果を通知し確認と撤去を 求めたが、立会いを拒否した市環境対策課は「職員らが目視で調 査したが、なかったので存在しない」と言い続けた。市議会での追 及にも環境共生部長は同じ答弁を繰り返した2)。住民の不安を払 拭するためと称して「無い」とした箇所の大気環境測定を実施し10 f/g以下で安全だと居直った。調査も除去工事も行っていない。 |
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| 2) 埼玉県、職員研修するも対策なし | |||||||||||||||||||||||||||||||
| 当初は市と同様に目視で「無い」とし、2010年8月23日記者会見 で上田知事は「職員が目視で調査したがなかった」。青年の家跡 地についても「搬入先の抽出検査で見つからなかった。いろいろな いたずらがあるのかもしれない。ミステリーですね」と放言。翌日東 京新聞が『埼玉県ずさん調査 石綿入り破片「見つからず」実物知 らぬ職員が調査』の見出しで報道。この後県は専門家を入れて再 調査しアスベスト混入を認めた。さらに職員70名の研修を兼ね専 |
| 門家7名と鴻沼川側道を調査、 740個のアスベスト建材片を拾集した。職員の目視能力が高まったせいか、 リサイクル施設への立入調査では13施設でアスベストを検出。他県よりは摘発率が高いという3)。しかし、 県も大気環境測定のみで、除去工事は行おうとしない。 |
| 3) リスクコミュニケーション欠如の行政/td> |
| 「リスクコミュニケーション」の啓発に熱心な行政だが、皮肉にも最もこれが欠けているのが県・市の自治 体だ。情報開示により同時期に首都圏14カ所へ青年の家跡地と同じロットの砕石の搬出を知った。場所の 詳細は墨塗りで不開示となり、情報審査会に不服申立をしたが県民の安全よりも業者の利益優先の決定を 下した。私たちの調査で、その1つが圏央道桶川北本IC付近の高架下に使われたことを突き止めた。リスク 情報を隠し住民に誠実に対応していない。 |
| 4) 国へ要請 |
| 国会でもアスベスト混入再生砕石の問題は取り上げられ、2010年9月9日、国交省、環境省、厚労省の3省 合同で再生砕石への混入防止とリサイクル施設などへの立入調査の徹底を自治体に通知した。11月10日、 「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史事務局長や当会らは近藤昭一環境副大臣に面会し、建 材に詳しい専門家による全国的調査の実施および関係省庁合同の検討会を設置し法改正や実効ある対策 を求める要望書を提出した。 |
| 5.再生砕石アスベスト混入の問題点 |
| 1) 細かく砕かれたアスベスト建材も非飛散性か |
| アスベスト建材(レベル3)は非飛散性で再生砕石に混入しても問題ないと行政はしばしば公言する。再 生砕石の業界の粒度基準(RC40)では直径2.3o以下の成分が5〜25%もある。その中には飛散性のアス ベスト粉じんが存在することは誰もが想像しうる。また目視可能な(直径20〜40mm)スレート片断面からもア スベストの繊維束が飛び出し、少し触れただけで剥離する。細かくなる程スレート片断面積は飛躍的に増加 する。砕かれたアスベスト含有建材は飛散性となる認識が必要だ。 |
| 2) 子どもを最優先に守るべき |
| 小学校の敷地内、公園、子どもが遊ぶ傍らに再生砕石があり、心配になり撤去を求めた。放射線と同様 に子どもはアスベストの感受性が高い。子どもの生活空間からアスベストを除去して欲しいと学校長や教育 委員に要請したが、大気濃度が0.36f/gだから問題ないと聞く耳を持たない。アスベストは「沈黙の時限爆 弾」とも言われ安全性に関しては閾値がない。ましてや子どもたちが曝露した場合、成人し、人生の最も活 動期に発症する悲惨な状況を作り出す。大人の責任として看過できない問題である。 |
| 3) 混入の原因は? ずさんな解体の実態 |
| ジャーナリスト井部氏の取材にリサイクル施設関係者は「どうしても取りきれない、つぶして入れられたらど うにもならない」と本音をいう4)。リサイクルの中間処理だけでなく、「上流を絶たなければ」と外山測定士は 強調する。実際に解体後の更地にスレート片が散在していることが多い。ミンチ解体現場を5日間にわたり ウオッチして行政に通報したケースでは、解体業者は石綿建材を無届で解体し、届け出の義務も怠ってい た。行政の立入調査と指導が入ったが、 処罰されることはなかった。また、80u未満は届けが免除されて いることも問題である。ミンチ解体されコンクリートガラに混ざってリサイクル工場で破砕され、再生砕石とな る経路が浮かび上がってきた。 |
| 4) 深刻な公害の懸念 |
| 国交省の推計では、アスベスト建材使用の民間建築物の解体棟数は2009年現在約1割で、残り9割はこ れから数十年間に解体されると予測されている。解体ピークはこれからである。再生砕石としてアスベストが 「リサイクル」されると、環境中に低濃度ではあるが放出され続け、将来健康に無視出来ない汚染された大 気環境を作り出すことが想定される。アスベストに半減期はない。いまから真剣に取り組んで行かないと将 来大きな禍根を残すことになる。 1)浦和青年の家跡地利用を考える会 HP 2)さいたま市議会 市民生活委員会「平成22年6月14日、9月13日 議事録」 さいたま市 HP 3)井部正之 「リサイクル揺るがす再生砕石のアスベスト問題」ウエッブマガジン「ECO JAPAN」日経BP社 4)井部正之 「再生砕石にアスベストが混入」日経エコロジー 3月号 p76 (2010) |