カルボン酸の酸性度 (共鳴効果と誘起効果)

 

 

 カルボン酸とアルコールはともに弱酸である。

しかし、カルボン酸は対応するアルコールよりもずっと酸性である。

(対応するとは、おそらく同数の炭素原子を持つことを指す。)

 

酢酸(CH3COOH, pKa 4.75)がエタノール(CH3CH2OH, pKa 16)より

酸性度が強い原因には2つの理由がある。

 

<誘起効果>

酢酸には電子吸引基であるカルボニル基を持つ。

この誘起効果がOH の解離を促進する。

また、解離後の酸素上の陰イオンもカルボニル基の電子吸引性により安定化されている。

一方、エタノールにはこのような効果はない。

 

 

カルボニル基はこのような共鳴構造を取る事ができる。

右の電荷が分離している共鳴構造体において、

炭素原子は+電荷を帯び、カルボカチオンとなっているので「電子不足」である。

よって、周りの原子から電子を吸引する。

 

 

 

両分子共に酸素原子の電気陰性度により、OHの分極は生ずる。

しかし、酢酸においてはカルボニル基の電子吸引的な誘起効果によって更に分極される。

 

 

 

カルボニル基の電子吸引的な誘起効果は、

酢酸から生じる酢酸アニオンをも安定化するため、

酢酸アニオンはエトキシドアニオンよりも安定である。

これは共役塩基の関係(共役酸のpKaが大きいほど、その塩基は強い)を満たしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<共鳴効果>

酢酸が解離して生成する酢酸陰イオンは共鳴により安定化できる。

一方、エタノールが解離して生成するエトキシドイオンは共鳴安定化できず、

負電荷は酸素上に局在しており不安定である。酢酸も図のように共鳴できるが、

それはエネルギー的に不利な電荷分離形(共鳴構造の中に+と−を含んでいるタイプ)である。

そのため、酢酸の水との反応の平衡はエタノールのそれより右に傾いている。

 

この共鳴効果を理解するには、順序良く考えていくことが非常に大切です。

まずは高校時代を思い返してみましょう。

 

酸・塩基の強さとは何でしたか?

電離度ですよね。電離度。

 

 

つまり、電離した物質量が多ければ多いほど・・・電離度は大きくなる。酸・塩基は強くなる。

 

ということを、頭に置いといて次に進みます。

 

さて、酢酸とエタノールを電離させてみましょう。

 

この場合、電離度が大きいというのは平衡が右に傾いている状態です。

「H」は共通因子ですので、

CH3COO」と「CH3CH2O」の安定性を考えることによって、

酢酸とエタノールの電離度、つまり酸の強さを決めることができるのです。

 

このとき、重要になってくるのが「共鳴効果」なのです。

 

 

まずは酢酸から見てみましょう。

 

 

は次のような共鳴構造を取る事ができます。

 

二つの構造式は等価ではない。

右の構造式においては電荷の分離が含まれている。

 

 

 

 

一方、は次のような共鳴構造を取ります。

二つの構造式は等価である。

電荷の分離は含まれていない。

 

 

 

 

つまり、の方が安定ですよ〜ということが言いたいんですよね。ここでは。

だから、平衡が右に傾きます。

 

 

では、エタノールを見てみると・・・

 

この平衡は左に傾きます。なぜなら、共鳴構造を取ることはできませんし、

エタノール「CH3CH2OH」のほうが水素結合により安定であるからです。

 

したがって、酢酸のほうが酸性度が大きく、pKaが小さい。

ちなみに、共鳴効果と誘起効果のどちらの効果が大きいかは只今論争中だそうです。